【読書感想】小川洋子さん著「はじめての文学」(自選短編集)すぐそばにある別世界に連れて行ってくれます
"文学の入り口に立つ若い読者に向けた自選アンソロジー"
別の本で小川洋子さんの短編を読んでおもしろいなあと思ったので、読んでみた。
収録作品は以下。
1.冷めない紅茶
2.薬指の標本
3.ギブスを売る人
4.キリコさんの失敗
5.バックストローク
2の「薬指の標本」 がめっぽうおもしろかった。
どんなものでも標本にすることを請け負う不思議な職場で、若い女性が男の支配する世界に自ら行こうとする話。
現実にはなさそうな職場なんだけど、ぼくはのっけから完全にこの職場の世界に入れた。ぼくの住んでる町にもありそうな感じがした。そしたらあとはこの世界を味わうだけ。楽しかった。
標本にするという行為が、いつでも見れるようにするために残すんじゃなくて、封じ込めて終わりにするために残すということが描かれていて、その"封じ込めたい"という欲求あるある!と思った。捨てても心の中では終われないから標本化という儀式によって封じ込める。この儀式を自分の心の中で自力でできる人は強い人なんだろうなあ。
あっ。でも標本化はこの作品のメインテーマではないと思う。メインは"自ら支配されることを選ぶ"ということについて。だと思う。
以前浴室で今は使われていない狭い空間でゴニョゴニョしたりしてます。でもその手の具体的な描写はないですよ。
そんな簡単に言い切っていいもんか悩んだけど、ぼくは「標本化」と「男に支配される」ともに依存なんだろうなあと思った。忘れて終わりにするために頼る。考えなくてすむために頼る。それで自分が楽になるならそれがいいって感じ。多かれ少なかれ誰にでもある欲求なんじゃないかな。
結末はハッピーエンドでもアンハッピーエンドでもなく、ここから先はご想像ください的な感じ。おかげで読み終えてもこの世界から抜けづらい。
この世界、ぼくはとっても好きです。
1の「冷めない紅茶」と4の「キリコさんの失敗」もそうとうおもしろい。1は主人公の女性の孤独感がリアルに伝わってくる内容で、空気感がキレイ。4はストーリーがおもしろい。
他の作品もこれから読む。
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