読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

あうろーブログ

アウトローにもなれない41歳の男が今日生きるために書きます。思ったこと、たまに妄想しちゃったこと、読んでよかった本、洋楽まとめなど書いてます。アマチュアドラマー

【読書感想】ミシェル・ウェルベック「地図と領土」死ぬってどういうこと?資本主義ってどういうこと?をこれでもかと描いた作品

読書感想

ミシェル・ウェルベック「地図と領土」

フランスの文学賞ゴンクール賞」受賞作

 

ミシェル・ウェルベックの「ある島の可能性」と「素粒子」2冊ともすごくおもしろかったので、3冊目。 

 

394ページの本で、192ページから圧倒的におもしろかった!
最初から191ページまではあんまりおもしろいと思えず、けっこうしんどかった(苦笑)
ミシェル・ウェルベックの著書を読むのがもしはじめてだったら、たぶんさっさと投げ出したと思う。
3冊目でよかった。
あやうくおもしろい小説をのがすとこだった。

 

内容(「BOOK」データベースより)

驚愕の“惨劇”の目くるめく謎―鬼才ウエルベック最大の衝撃作。孤独な天才芸術家ジェドは、一種獰猛な世捨て人の作家ウエルベックに仄かな友情を抱くが、驚愕の事件が二人に襲いかかる。謎をめぐって絢爛たるイメージが万華鏡のように炸裂する傑作。フランスで50万部を超えたゴンクール賞受賞作。

 

ぼくは、

死ぬってどういうこと?

資本主義ってどういうこと?

を、渾身の力をこめて描いてくれている作品だと思う。

 

この作品にはいくつかの死が描かれていて、その物語が"死ぬってどういうことか"を語ってくれている。もちろんそれは"生きるってどういうこと"につながっている。人間が生きる苦しみがたっぷり描かれている。ネタバレになっちゃうので、死についてはここまで。

 

資本主義ってどういうこと?について描かれてる(とぼくが思う)魅力的な文章をいくつかご紹介。

 

「新聞で読んだんですが、第二次大戦後、フランスのカフェの八十パーセントがなくなったそうです」フランツは店内を見まわしながらいった。<中略>「いまでは昼食は三十分ですませるようになったし、酒も飲まなくなったでしょう。そして禁煙の法令がとどめを刺したわけです」
「揺り戻しがありますよ。前と同じにはならなくても。長いあいだ、生産性増大の時期が続いて、それがいま終わりにさしかかりつつあるのでしょう。少なくとも、西欧では」 

 

昔あった一杯500円くらいの個人経営っぽい喫茶店。すっかりなくなっちゃいましたよね。さみしいとか言ったってマックやドトールサンマルクカフェに行っちゃうもんね。

 

「どうしてもう辞めないんです」ジェドが尋ねた。父はまったく意味がわからないという表情で何もいわずジェドを見た。
「だって、お金はけっこう稼いだでしょう。リタイアして、少しは人生を楽しんだら」父は相変わらず息子を見つめていた。息子の言葉が腑に落ちない、あるいはその意味がつかめないという様子だったが、少なくとも丸一分は経ってからこう問い返してきた。「そうはいっても、何をすればいいんだ?」その声にはまるで途方に暮れた子どものような響きがあった。 

 

高齢者はネット上に書く割合が少ない。国や企業としても貯金をどんどん消費してもらわないといけない。だからあんまりこういう話題は目にしないんだと思う。けど、こういう人もたくさんいるんだろうな。

 

彼はサムスンZRT-AV2の使用説明書に二分ほど、目を走らせた。<中略>「立派な製品ですよ、現代的な製品だ。あなたがこれに惚れ込んだとしても不思議はない。だが、覚悟しておかなければならない。一年、せいぜい二年もすれば、さらに性能がアップしたとかいう新製品にとってかわられることでしょう」
「わたしたちも、わたしたちだって製品なんです」彼はさらに続けた。「文化的な製品なんですよ。わたしたちだって、いずれ旧型ということになる。まったく同じ仕組みが働いているんです ー ただし一般的にいって、こちらにははっきりした技術的な改善や、性能の向上はありませんが。残るのはただ、新機軸に対する、純粋な欲求だけなんです」

 

ちょっとこの引用だけだとわかりづらいけど…

他の著作でも描かれている、いわゆる予言的な内容。いずれ今の課題やら問題やらを取り除いた新人類が誕生するということ。技術的にはすでに夢物語ではないらしい。人工知能とかクローンとか。ぼくはうまく想像できないからなんとなくこわい。わからないとこわいと思うのが人間のサガらしい(とどこかで読んだ)。 

 

だが、きみの置かれていた立場だと、あれはどうしたって、自分より豊かな同業者たちに嫉妬した二流のアーティストの作品と解釈されてしまっただろう。いずれにしろ、いまの時代は何もかもが市場での成功によって正当化され、認められて、それがあらゆる理論に取って代わるというところまで来ている。それよりもっと遠くを見ることはだれにもできない。まったくできないんだ。いまだったら、きみがあの作品に取りかかっても大丈夫だ。何しろ、現時点ではフランスで一番稼ぎのいいアーティストになったんだから。

 

これはもう現実として認めるしかない話。実際そうだもん。「売れた」あるいは「稼いだ」あるいは「有名になった」からできる、やれる、他者に影響を与えることができる。

 

こんな感じで、ミシェル・ウェルベックの作品は、全体のストーリーとは別に、ちょいちょい魅力的な文章が散りばめられているので、それだけでもおもしろい。もちろんストーリーもスケールが大きくておもしろい。

 

たまにはフランス文学もいかが?

 

関連記事

oulaw.hatenablog.com

 

oulaw.hatenablog.com

 

oulaw.hatenablog.com

 

 

とりあえず…

今日は生きるつもり。

 

 

ツイッターやってます。ブログ更新通知出してます。