【読書感想】ダニエル カーネマン著「ファスト&スロー」ブログ書く人も書かない人も読んで損はない心理学&経済学の本
ダニエル カーネマン著「ファスト&スロー」
内容紹介(Amazonより)
我々の直感は間違ってばかり? 意識はさほど我々の意思決定に影響をおよぼしていない? 心理学者ながらノーベル経済学賞受賞の離れ業を成し遂げ、行動経済学を世界にしらしめた、伝統的人間観を覆す、カーネマンの代表的著作。2012年度最高のノンフィクション。待望の邦訳。
長いし決して読みやすい本ではない。けどすごくおもしろかった。
内容が濃すぎて…幅が広すぎて…
読書感想書くのに引用したいなあという箇所が多すぎて困った(苦笑)
人間が決して合理的な意思決定をしない(=できない)ことを説明してくれて、さらにその前提のもとで少しでもよい意思決定をする(=幸せになる)にはどうすればいいか
ということが書かれている。理論だけじゃなくて理論を裏付けるために行った実験の内容・結果も書いてある。
一部引用だと自己啓発の本と同じように見えちゃうけど、まずはこちらをご紹介。
誰かに嘘を信じさせたいときの確実な方法は、何度も繰り返すことである。聞き慣れたことは真実と混同されやすいからだ。独裁者も広告主も、このことをずっと昔から知っていた。だが、真実らしく見せかけるのに全部を繰り返す必要がないことを発見したのは心理学者である。
自分を信頼できる知的な人物だと考えてもらいたいなら、簡単な言葉で間に合うときに難解な言葉を使ってはいけない。
<中略>
この論文でオッペンハイマーは、ありふれた考えをもったいぶった言葉で表現すると、知性が乏しく信憑性が低いとみなされることを示した。
ここらへんなんかは、ブログなどの文章を書く人やセールス・マーケティングを仕事にしている方にはおなじみの話なんだろうけど、こういうちゃんとした本で書かれると納得できちゃう。
いわゆる直感だったり錯覚だったりと言われるような現象について、たくさんおもしろい事例を書いてくれている。
※原文はドル表記。1ドル=100円で換算して円表記にしてます。
10%の確率で9500円もらえるが、90%の確率で500円失うギャンブルをやる気がありますか?
10%の確率で1万円もらえるが、90%の確率で何ももらえないくじの券を500円で買う気がありますか?
まずはじっくり考えて、二つの問題が全く同じであることをよく納得してほしい。どちらの場合も、いい目が出れば9500円得をし、悪い目が出れば500円損をすることになる。
<中略>
実際には、二番目だけイエスと答える人が圧倒的に多い。これは、外れたくじ券に払ったのは費用だと考えるため、ギャンブルの負けよりはるかに受け入れやすいからである。
それでは今度は、論理の問題を出題しよう。二つの前提と一つの結論を示すので、できるだけすばやく、論理的に成り立つかどうか答えてほしい。二つの前提から最後の結論は導き出せるだろうか。
すべてのバラは花である。
一部の花はすぐにしおれる。
したがって、一部のバラはすぐにしおれる。
大学生の大部分が、この三段論法は成り立つと答える。しかし実際には成り立たない。すぐにしおれる花の中にバラが含まれないことはあり得るからだ。
<中略>
たいていの人は、結論が正しいと感じると、それを導くに至ったと思われる論理も正しいと思い込む。たとえ実際には成り立たない論理であっても、である。
よく考えれば…と思うけど、そこはよく考えられないのが人間ということらしい。しかも、よく考えるとちっともおもしろくなくなるようだ。例えばこれ。
非常に頭のいい女性は、自分より頭の悪い男性と結婚する。
この話題をパーティーで持ち出して「どうしてかしら」と訊ねたら、かなり盛り上がってみんなに感謝されるにちがいない。多少は統計学を学んだ人でさえ、一足飛びに因果関係で説明しようとするはずだ。たとえば、「同じくらい頭のいい男と競争したくないからだ」とか、「頭のいい男は頭のいい女と比べられるのをいやがるので、頭の悪い男で妥協せざるを得ないからだ」等々。いやいや、ノリのいいパーティーなら、もっと突拍子もない説明が飛び出すことだろう。では今度は、次の文章を考えてみほしい。
夫と妻の知能指数の間には、完全な相関関係は認められない。
この文章は明らかに正しいが、少しもおもしろくない。そんなものに完全な相関を期待する人がいるだろうか。完全でないとしても、理由を考える気にもなるまい。だが、あなたが興味津々だった先ほどの文章と、このおもしろくない文章とは、数学的には同じことを言っている。
たしかにおもろくない。「相関関係ないよ」なんて言おうもんなら「場を盛り下げる人」とか「空気よめない人」 って言われて嫌われるのがオチだ。
この本には夫婦関係についてもちょいちょい書かれていて、これなんか結構衝撃的。
ドーズが提示した印象的な例をここで紹介しよう。これは、結婚が続くかどうかを予測する式である。
セックスの回数ー喧嘩の回数
あなたの計算結果がマイナスにならないことを祈っている。
この研究から得られる重要な結論は、こうだ。封筒の裏に走り書きするようなアルゴリズムで十分だということである。
「これは読まなかったことにしよう」という方がたくさんいらっしゃるのでは?
ご安心を。この本には幸せになるヒントもちゃんと書いてくれてる。(簡単ではないと書いてあるけど…)
連想ネットワークでは、双方向の関係はめずらしくない。たとえば楽しいと笑顔になるが、笑顔になれば楽しくなる。
<中略>
だから、「自分がどんな気分のときも、つねにやさしく親切にしなさい」という忠告は、まことに当を得ていると言えるだろう。やさしく親切に行動することで、あなたは実際にやさしく親切な気持ちになる ー これはとても好ましいご褒美である。
経験する自己の幸福感を話題にするときは
「ハッピーになるいちばん簡単な方法は、時間の使い方を自分でコントロールすることだ。自分の好きなことをする時間を増やせばいい」
どうしてこういう話になるのかは、本書を読んでのお楽しみ♪
読みやすい本とは「知っていることが書かれている本」「先の予想ができる本」だと思う。この本はそうじゃないから読むのに時間がかかる。ということは、知らないことが書かれているということ。知らないことを知れるのはうれしい。読むのにたくさん時間使ったけど、少しも惜しいとは思わない。
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