【読書感想】村上龍さん著「55歳からのハローライフ」仕事が見つからなくて孤独感にさいなまれる中で、再出発の芽吹きを感じる本
村上龍さん著「55歳からのハローライフ」
内容(ウィキペディアより)
『55歳からのハローライフ』(55さいからのハローライフ)は村上龍の小説。5つの短編小説から構成されているが、新聞連載時から「55歳からのハローライフ」という総タイトルのもとに、それぞれの作品がまとめられていた。 2012年に地方紙連載されたあと、単行本が2012年12月に幻冬舎から刊行され、2014年には同社で文庫化された。
2014年6月14日から7月12日にかけてNHK総合テレビジョン「土曜ドラマ」で5回シリーズでドラマ化された。
同作品は、55歳という定年が間近になった世代の人生の再出発に向け、様々な悩みを抱える人たちの生き様を描いた5編の短編連作小説である。
以下の5つの話が入った短編集。
1.結婚相談所
2.空を飛ぶ夢をもう一度
3.キャンピングカー
4.ペットロス
5.トラベルヘルパー
フィクションなのに、いやフィクションだからこそかな?
すごくリアルに55歳あたりでの人生の危機を描いてる。
そうなるよな〜って感じ。
5話ともおもしろかった。
☆ ☆ ☆
早期退職後に転職活動してる様はリアルすぎてつらい。
3.キャンピングカーより
懇意にしていたシノハラの社長からあっさりと拒まれたのはショックだったし、甘さを思い知らされたが、心のどこかに、そんなはずがないという思いがあったのだ。
五十八歳の元営業職に再就職口など簡単に見つかるわけがないという現実と向かい合うのが怖かったし、受け入れることができなかった。現状だけでなはなく、営業のプロとしての実績や信頼関係も否定されてしまった気がしたからだ。とにかく、かつての取引先の誰かから、まかせてください、富裕さんならだいじょうぶですよ、という台詞を聞きたかった。
頭ではわかってるつもりでも「わかってない」、というか「わかりたくない」というのがある。ぼくはいつもそれと戦っているような気がする。最後の「だいじょうぶですよ、という台詞を聞きたかった。」というのはすごく切ないけど、すごく普通の承認欲求なんだろう。
さんざんいっしょに飲み食いして、ハワイとグアムにゴルフ旅行に行ったこともある百貨店のバイヤーから、あず履歴書を送るのが筋だろうと言われ、身体が震えるのがわかった。富裕は、やっと現実を把握した。
身をもって思い知らされて、やっと理解する。やっと自分で「わかった」と認識する。でも、実はそれでもまだ認識が足りない。それをこの作品は描いてる。めちゃくちゃリアリティを感じる。
ハローワークではタッチパネルのパソコン画面で求人情報を検索することができる。年齢、職種、希望勤務地、希望月収などの項目を選択して求人を見るのだ。最初希望月収を三十万円としたが、関東全域まで勤務地を広げても求人は一件もなかった。二十万に落としてもゼロで、十二万まで落とすと、数十件ヒットしたが、それらはビルの管理人、夜間の道路工事、冷凍倉庫での食品の仕分けと梱包、それにビルや公園の清掃などだった。
しんどい…
ぼく自身も数回転職していて、これと似たような感じを味わったことがある。こういう状況は、フィクションでもノンフィクションでもよく見るので、そんなに少数派ってわけではないだろう。でも当人は「そんなわけない」とか「なんで自分だけ」と思ってしまい、悪い方向にハマっていく。
仕事が見つからないのもつらいけど、一番つらいのがこれ。
トラベルヘルパーより
貯金もゼロに等しいし、年金もたかが知れているし、体力もずいぶん弱ってきたが、宅急便の下請けで時間給のアルバイトだったら、仕事はないわけではない。問題は、食い扶持よりも、このどうしようもない孤独感。
ぬくもりのようなものが欲しい。
孤独かどうかじゃなくて、孤独だと感じるかどうか。孤独だと感じると、とたんに生きるのがつらくなってくような気がする。
この本は悲惨な状況を描くだけでなく、そんな中でいわゆる再出発のような切替えの芽吹きを描いてくれている。だから読後感は悪くない。
また、この本は、5話中3話で、お茶(コーヒー、紅茶)を大事なものとして描いている。例えばこれ。
4.ペットロスより
何かね、心が揺れて、自分自身を失っているときって、お茶を楽しむ余裕がないんですよね。ぼくは、だからお茶っていうか、飲み物は、単に水分を補給するだけじゃなくて、もっと意味があるんだと思うんですね。悲しいことや苦しいことがあるときに、ゆっくりとお茶を飲んで救われることって、多いと思うなあ。
ぼくは最近、水分補給の目的でしかお茶を飲んでないような気がする…
もっとゆったりとお茶を飲まなきゃな。
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とりあえず…
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