まもなく上映の原作「植物図鑑」有川浩さん著 アマアマな恋愛小説なのに料理のレシピも付いてて一粒で二度美味しい
有川浩さん著「植物図鑑」
2016年6月4日上映開始の映画の原作。
映画化されるくらいだから当然おもしろい。
あとがきより
男の子の前に美少女が落ちてくるなら女の子の前にもイケメンが落ちてきて何が悪い!
ということで、突然イケメンが現れて…というアマアマな恋愛小説。
有川浩さんのアマアマは男のぼくでもおもしろくて惹きこまれる。
この作品はそれだけじゃない。
自然に生えてるいろんな植物を料る(りょうる)場面が描かれていて、巻末にはそれらのレシピが付いている。
この小説ではじめて「料る」という言葉を知った。作者出身地の高知でよく使われる言葉だけど、広辞苑に載っている標準語らしい。「料理する」よりなんかいい感じの言葉だ。
ぼくは「ノビルのパスタ」が一番おいしそうと思った。
「・・・やだ、おいしい」
「やだって何だよ」
イツキが珍しくふてたような声を出す。
「おいしいのに説明できないからイヤなの! やだもうおいしい!」
ようやくイツキが満更でもない顔になった。
味付けは基本的なパスタの茹で汁だけだ。それなのにそれだけの味ではない。ベーコンの甘さと塩気は予想の範疇だったが、セイヨウカラシナのほろ苦さとノビルの甘さ!
特に球根部分をカリッと噛み砕いた食感と甘い滋味は「アレみたいな」などと説明できるものがない。
<中略>
「どうしよう、今まで食べたパスタの中で一番好きかも!」
<中略>
「笑いごとじゃないよぉ、一番好きなパスタがお金を出しても食べられないものになっちゃったなんて・・・」
ノビルがどんな植物で「ノビルのパスタ」がどんな料理なのかは本書を読んでのお楽しみ♪
しかし幸せそうなやりとりでうらやましい…
植物の魅力、それを使った料理の魅力、それだけじゃない。この小説は手作り料理の魅力を最大級に表現している。
男は胃袋で掴めという。それは女にも適用できる理屈なのかもしれない。
就職して一人暮らしを始め、もともと無精だったこともあって生活は荒れていた。コンビニと弁当屋とスーパーの惣菜のローテーション。
そんな毎日に慣れきっていたところへ「自分のために」作られた食事。それは完全な不意打ちだった。
誰かが自分のために作ってくれた「ごはん」はとてもおいしくて、とても温い。
ぼくは目下のところコンビニと弁当屋とスーパーの惣菜のローテンション中。うらやましいったらありゃしない。
「大丈夫かな、薄くない?」
「ううん、すっごくおいしい」
涙が出るほど。 ー と、本当に涙が出てきた。
「え。うわ、ちょっと」
男が泡を食ったように箸を置いた。
「何で泣くの」
「や、何か・・・おかーさんに作ってもらった朝ごはんみたいで」
「いやそれは誉めすぎ」
「そうじゃなくて、何か・・・誰かが作ってくれたごはんっておいしかったんだなぁって」
炊飯器で炊いただけの米と卵と食べるだけで、あるいは一緒に味噌汁をすするだけでこんなにおいしいなんて。
ちきしょー。うらやましー。
たしかに一口食べて涙が出そうになることはある。料理の力ってすごいと思うことはある。
有川浩さんの文章の魅力はアマアマ感。作品中にたくさんある。
「ゆーびきーりげんまん、ウソついたら針千本呑ーます、指切った!」
照れ隠しもあって大袈裟に指を切る仕草をし、さやかは食卓に向き直った。ちらりとイツキを窺うと、こちらを見つめる表情が優しい。慌てて俯き、目を逸らす。
「じゃあイツキ先にシャワー浴びてきて」
タオルを巻いたイツキがベッドを下り、自分の衣類置き場から替えの下着だけを出して風呂場へ抜ける短い廊下へ向かった。
「一緒に浴びる?」
途中で振り返ったからかい声にさやかは「やだっ」と布団をかき寄せた。何かと悪さをされてシャワーだけで済まなくなることがままあるからだ。
うらやましすぎるー(さみしい男の魂の叫び)
結末はとってもオシャレ。どんな結末かは言わない。
言えるのは、最後の章が「そうくるか! これはいい!」と思ったということだけ。
映画もきっとおもしろいと思う。
男一人で観に行くのはちょっと難易度高いけど…
ぼくも誰かに胃袋を掴まれたい!
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