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【読書感想】井上荒野さん著「静子の日常」魅力的なおばあちゃんとその家族、日常にある影を感じつつも爽やかな読後感

前から読みたいと思っていた井上荒野さんの「静子の日常」、やっと読んだ。 

 

連載もの。家族の日常を描きつつ、その中にふと出てくる影のようなものを感じる作品。読みやすいしおもしろい!

 

1章ごとに、家族4人の誰かの視点で書かれている。メインは静子さんという75歳のおばあちゃん。あとは静子さんの息子夫婦二人と孫娘一人で計4人。

 

夫に先立たれたおばあちゃんの前向きで洒落っ気のある生き方が、この作品の一番の魅力。すごくアクティブ。でも元々そこまでアクティブな女性ではなかったところがまたおもしろい。突然スイミングはじめたり、息子のパソコンを内緒で覗くためにパソコン習ったり、地図も持たずにある人の家を探しに出かけたり…

そんな行動の理由を書いたらおもしろくなくなっちゃうんで、それは読んでのお楽しみ。

 

ぼくは孫娘に一番惹かれた。孫娘視点の章の中にある一節。

 

雨の日や風の日は、「ほんとうの日」じゃない気がしていた。そういう感覚は、じつは今もある。このところ、ほんとうの日を全然過ごしてない気がする。ほんとうじゃない日に馴染んでしまって、何がほんとうなのかわからなくなりそうだ。

 

一番共感できてお気に入りになった文章。ぼくは十分大人だけど、この思春期の女の子に共感できてしまう…

 

 

孫娘のボーイフレンドが、自分の部屋に孫娘をよんだときに、律儀に部屋の窓を開けておくという場面がある。礼儀というかジェントルマンたるものそうするべきという話なんだけど。

 

ぼくも思い当たるフシがある。

カッコつけるというのもあるけど、本当は"上手くいかなかったときの保険"としてやっているんだと思う。上手くいかなかったときに、自分で自分に言い訳ができる。あるいは上手くいったかどうかの結論を先延ばしにできる。

本当は退路を断って気持ちをぶつけるべきなんだろう。窓も閉めて、鍵も閉めて、鍵を隠すべきなんだろう。それが許される場合と許されない場合があって、それが簡単にわからないのが難儀なんだけど…

 

 

まあとにかくおもしろいです。読後感は爽やかです。

 

 

とりあえず…

今日は生きるつもり。

 

 

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