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【読書感想】西加奈子さん著「地下の鳩」過去のトラウマとつきあっていかなくてはいけない人間の苦しい心情を描いた短編「タイムカプセル」がおもしろい

西加奈子さん著「地下の鳩」

 

 堕ちた男と堕ちたい女の心情を描いた中編「地下の鳩」

と、「地下の鳩」の脇役として登場していたオカマを主人公にして、過去のトラウマ(主にイジメ)とつきあっていかなくてはいけない人間の苦しい心情を描いた短編「タイムカプセル」

の2話が入った本。

 

どちらも"暗い"雰囲気の作品。

 

どっちもおもしろかったけど、特に短編の「タイムカプセル」がとってもおもしろかった。

ググッと引きこまれて、ラストはグググッときた。(ラストのことは書かないのでご安心を)

 

主人公はオカマバーを経営者していて、ママとしてお店で仕事をしている。そのお店での人間模様を描いている場面が大半。

 

人間のあさましさを全力でディスってる感じがたまらない。(実際にはディスっているわけではない。あくまでぼくがそう感じたってこと。) 

 

結局何を求めているかって、自分たちは、若いだけの女たちより面白く、いい女であることを確かめたいのである。自分たちが結婚出来ないのは自分たちの落ち度ではなく、男たちがひるむからだと、言ってほしいのだ。

 

こういう、自分に自信があって、きちんとした身なりの男は、絶対に家庭を壊すことはしない。指輪をしているのも、女を寄せ付けないようにするためではなく、結婚していると最初から宣言しているのだから、分かっているよな、という意思表示だ。絶対に自分が不利にならないように持っていくのがうまい。だからこそ、仕事が出来る、ということでもあるのだが。

 

こんな感じで「わかっているけど言わないでよ〜」というような描写がたくさんある。別作品の「こうふく あかの」でもあったが、西加奈子さんのこういう毒舌な感じの文章はとてもおもしろくて好きだ。

 

最後はグググッときますよ。

 

☆ ☆ ☆

 

続いて中編の「地下の鳩」について

 

男で堕ちちゃったけど開き直れない感じ

しかし、今の自分が、女たちに無視されるさまを、洟も引っかけられない状況を想像するのは、辛かった、避けなければいけなかった、現実の暴力を呼び起こしてはならなかった。吉田はこうむるかもしれない屈辱、一パーセントでも可能性がある「それ」を避けるため、そういう女たちには近づかないようにした。

 

女で堕ちたい(というより堕ちざるを得ない傾向を持った)感じ

何故自分はこういう関係に安心を覚えるのだろう。自分は若く、そこそこ美しく、人気もある。もっと健やかな、適切な関係に身を置いてもいいはずだ。なのに何故、後ろ暗い、人に言えない薄い闇のような関係に身を浸すと、落ち着くのか。

 

こんな男女に共感あるいは興味がある方は、楽しめると思う。ぼくは自分自身が"堕ちちゃった男"なので、完全に主人公の男になってこの作品を楽しめた。

 

西加奈子さんは明るい作品も暗い作品もおもしろい。

 

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とりあえず…

今日は生きるつもり。

 

 

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