【読書感想】小池真理子さん著「二重生活」不倫や浮気だらけの世界。疑いだすと生きるのがしんどくなることをまざまざと知らしめてくれる作品。
小池真理子さん著「二重生活」
映画化されて今年の6月25日に公開予定とのこと。
こちらのブログで知り、読みたくなった。早速読んでみた。
内容(「BOOK」データベースより)
大学院生の白石珠は、ある日ふと、近所に住む既婚男性、石坂史郎を尾行してしまう。大学の講義で知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「文学的・哲学的尾行」が心に残っていたからだ。そして珠は、石坂の不倫現場を目撃する。他人の秘密を知ることに、ぞくぞくとした興奮を覚えた珠は、石坂の観察を繰り返す。だが徐々に、秘密は珠と恋人との関係にも影響を及ぼしてゆく―。大学教授への想い、今は亡き恋人への追慕。スリリングな展開、乱れ合う感情。ページを繰る手が止まらない、傑作長編。
いや〜 しんどくておもしろかった。
なにがしんどいかって作品のテーマ自体もそうだけど、それよりも描かれている男女の言い争いのシーンがあまりにもリアルすぎてしんどい。俯瞰的に読めればいいんだけど、ぼくは思わず作品の世界に入り込んで自分を重ねてしまったもんだから、つらいったりゃありゃしない。
中盤にある主人公と彼氏の言い争いのシーンから抜粋(全部だと長いしこれから読む方の楽しみを奪うわけにはいかないので)
会話は、彼氏→彼女(主人公 名前:珠)の順番
「なんか怒ってる?」
「別に」
<中略>
「変だよ、今日。どうしたの」
「事実を話してるだけでしょ。全然、変じゃないわよ。…
<中略>
「あったりまえだよ。それ以上何の意味もないよ。他に何があるの」
「私に訊かれてもわかんないわ」
<中略>
「…なんだかちょっと嬉しいよ。やきもち妬いてくれるなんて・・・」
珠は最後まで聞かずに言った。「ごまかさないでくれる? そういう話をしてるわけじゃないんだから」
本気で怒っているつもりではなかったのに、怒気をふくめたそんな物言いをしてみると、偽物なのか本物なのかわかりかねる怒りが、にわかに珠の中にこみあげてきた。「やきもちとかなんとか、そういう話にすり替えないでよ」
「ごまかさないで」とか「すり替えないで」とか…
めちゃくちゃアルアルだと思う。ぼくはこれまでたくさん経験してきた。あーヤダヤダって感じ(苦笑)
この作品には不倫や浮気(行動まで至ってないちょっとした想いも含む)が描かれている。というかほとんどそれしか描かれていない。それをキーにして、"疑いだしたり、他人と自分を重ねてしまったりすると、生きるのがしんどくなる"ことを描いている。
最初はこういう考えで落ち着いていたはずの主人公が…
珠にとって、見なかったことは、なかったことと同じだった。むきだしの真実だけを追い求めるあまり、みすみす、大切な関係を壊すのは馬鹿げている、というのが珠の考えだった。
珠は水の中で一人、戯れる。行き着く先のわからない流れに身を委ねる。そして、死ぬまで、そうやって生きていくことができるのなら、他には何もいらない、とすら思うのだった。
だんだん変わっていってしまう。そこがこの作品の醍醐味。
最後にガツンとくる文章をご紹介。
そして、そんなふうに思うそばから、珠はこれが現実であることを強く自分に言い聞かせた。第三者がどう感じようが、誰がどれほど深い絶望のどん底に落とされようが、現実は無慈悲にも、このように進行しているのだった。
何者も、神ですら、その現実を妨害したり、破壊したりすることはできない。男と女のやることは、常に誰かを傷つけずにはいられず、たとえ世界中から糾弾されたとしても、男と女はそれをすることをやめはしないのだ。
いや〜 人間ってバカですね〜 生きるってしんどいですね〜
しかしこんなにはっきり言われるとしんどいんですけど…
結末に向けた後半の展開は、全くぼくの予想外だった。後半は特に「これからどう展開するのよ?」というおもしろさも倍増だった。
読み終えた直後の感想
なんで神様は男と女をつくっちゃったんだろう?
それを言っちゃあおしまいのような気がするけど(苦笑)
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とりあえず…
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