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【読書感想】三浦しをんさん著「舟を編む」紙のぬめり感がなつかしい…言葉の力や魅力を伝えてくれるあったかい物語

三浦しをんさん著「舟を編む

2012年本屋大賞受賞作。

電子書籍化されている。

 

内容紹介

玄武書房に勤める馬締光也は営業部では変人として持て余されていたが、新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか──。言葉への敬意、不完全な人間たちへの愛おしさを謳いあげる三浦しをんの最新長編小説。

 

 

途中からページをめくる指が止まらなくなった。前半でクライマックスのようなおもしろさがあって、「え?こんな手前でこんな盛り上げちゃうの?」って感じ。一瞬、後半盛り下がっちゃうんじゃ?と心配になったけど、まったくの杞憂だった。最後まですごくおもしろかった。

 

登場人物が善人ばかりの素敵な物語。辞書を制作する出版社の社員たちを描いている。主人公は3人。サラリーマン2人とサラリーウーマン1人。途中で視点が切り替わる。そんなに長くない作品なのにバンバン視点を切り替えてる。でも読みやすい。

 

それぞれの主人公に共感と愛着が持てる。ぼくが一番惹かれたのは、いわゆる「チャラ男」なタイプの「西岡」という男性。

 

わかりやすい見た目のよさや、貯金額や、社会生活において要求される性格のよさは、選別に際してほぼ関係ない。女が重視するのは、「自分を一番大事にしてくれるか否か」だと、西岡は数々の経験からあたりをつけていた。「誠実なのね」と女に言われたら、たいがいの男は馬鹿にされているのではないかと勘ぐる。だがどうやら、女は本気で「誠実」を最上級の褒め言葉だと思っているらしく、しかもその「誠実」の内実が、「私に対して決して嘘をつかず、私にだけ優しくしてくれる」ことを指していたりする。

やってらんねえ。いや、やりたいけど、やってらんねえ。

むろん、西岡は「誠実なのね」と女から賞されたためしがなかった。必要に応じて嘘もつくし、気分に応じて優しさの量を調節する。それが本当の誠実ってもんじゃないのか、と半ば開き直っている。必然的に、どの女とも長続きしない。

 

何かに没頭できる人の近くで、何にも没頭できない普通の男が苦悩している。その苦悩にとても共感できる。大丈夫。この物語は美しい話。この主人公が結局不幸のどん底に落ちるなんてことはない。

 

後半に登場する20代の「岸辺」という女性主人公。彼女も悩んでる。

始業式とちがうのは、「新しいなにかがはじまる」という期待がまるでないことだ。会社の仕事は義務ではないけれど、学校生活を送っていたころに感じた新鮮味やときめきからは遠い気がする。

お金を稼ぐためだけに働くって、人間の精神構造上、無理なのかもしれない。岸辺はため息をついた。

 

この女性が、働くうちに変わっていく。その変わりようがとっても気持ちいい。現実世界ではそんなことめったにないだろうけど、読んでて気持ちいい。20代でこんな経験できるなんてうらやましいと思う。

 

この物語全編を通して描かれているテーマの一つが「言葉」。

言葉ではなかなか伝わらない、通じあえないことに焦れて、だけど結局は、心を映した不器用な言葉を、勇気をもって差しだすほかない。相手が受け止めてくれるよう願って。

 

こんな風に、言葉の力や魅力を伝えてくれている。ぼくは口が重くて会話が苦手なタイプ。結局のところ「勇気を持って差しだす」ことができていないんだろう。勇気を持たいないとな…

 

この物語で登場する紙の辞書。40代のぼくにはなつかしい紙の辞書。

「あ行」から「さ行」までの文量が多いとか、紙のぬめり感(ページをめくるときに指に吸い付く感じ)とかが描かれていて、とてもなつかしい気分になった。

「辞書が早くひける人は頭がいい」なんて当時の大人たちが言ってたなあ(遠い目)  

 

ところどころで「クスッ」とさせてくれて、夢中になれて、あったかい気持ちになれる物語。気持ちいいひとときが過ごせる。  

 

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とりあえず…

今日は生きるつもり。

 

 

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