【読書感想】本谷有希子さん著「ぬるい毒」メンヘラM女が痛々しい…でも人生あきらめてないから応援したくなった
本谷有希子さん著「ぬるい毒」
電子書籍化されている。
こないだ「異類婚姻譚」という作品で芥川賞を受賞した作家さんの作品。
メンヘラ気味でMの傾向がある若い女性の心の葛藤を描いた作品。
悪い男にどちらかというと自ら望んでひっかかってつらい思いをしていく様が描かれている。
だいぶ痛々しくてつらい…
読者のぼくは男性なので、主人公に共感しつつも、自分を重ねるという感じではなくて、早くそこから抜けだしなよ!と必死に応援しながら読んだ。
つらいけど完全に惹きこまれて一気読みだった。
やっと分かった。正月にこうして集まるたびに、この人たちは同級生や知り合いを呼び出しては、からかって遊んでいるのだ。
<中略>
まんまとおびき出されてしまった自分の腹を殴りたくなった。
物語の前半でこうやって悪い男に引っかかってることに気づいたのに、それで終わらない。引っかかり続けていく。ハマっていく。「盲目的に好きになる」という恋愛感情とは違う何かに動かされている。
その何かがこの作品のテーマだと思う。簡単な言葉じゃ表現できないその何かをこの物語は表現してくれている。
悪い男のほうも、ただ単に「悪いヤツ」とは思えない。
人は誰かに笑われずには生きていけないし、人は誰かを笑わなければ生きていけない。哀しみが頭の中で弾けて、目から噴き出そうになった。
他人をおとしめて楽しむ人々がいるけど、その人達も人間のサガに逆らえずにやってしまうのでは?と思った。作品中にそんなことは書いてないんだけど、そう感じた。この物語は、善人か悪人かという簡単な線引きをさせてくれない。
主人公は、自身のサガに流されつつも、思考停止にはならずに必死に生きている。そこにすごく惹かれる。
だって自分を無視できる存在なんてどうやって許したらいいの? 自分がただ生きて、ただ死んでいく悲しみを、私は一人で受け止められない。駐車場の向こうにトラックが見えた気がして、早足になった。私は生きようとしてるだけだ。
ストーリーはとっても暗くてつらいけど、「生きる」という明るさが感じられる。だから読後感はいい。
生きるって楽じゃないけど、「生きる」って感じは明るいんだなと思った。
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