【読書感想】川上弘美さん著「はじめての文学」(自選短編集)やさしくてかわいらしくて切なくて幻想的な別世界に連れて行ってくれます
"文学の入り口に立つ若い読者に向けた自選アンソロジー"
最近お気に入りになってる川上弘美さん
収録作品は以下
01.運命の恋人
02.神様
03.パレード
04.ときどき、きらいで
05.春の絵
06.椰子の実
07.ざらざら
08.椰子・椰子 春夏秋冬
09.草の中で
10.花野
11.北斎
12.うごろもち ※本当は難しい漢字
13.おめでとう
1話ずつはとっても短い。けど、どれもすぐ別世界に連れて行ってくれる。
03.パレードは、すっごくおもしろいベストセラー長編「センセイの鞄」の外伝。もともとはふんだんな挿絵つきの単独作品。「センセイの鞄」を読んでから日が浅いということもあり、即その世界に入れた。すごく心地よい世界。たまらない。「センセイの鞄」が好きな方は読んだほうがいいと思う。
純文学よりの小説は"大人になれない"を描くことが多い。川上弘美さんは結構はっきり書く。
09.草の中で
あたしは少し泣きたい気持ちだった。田辺徹に「将来何をしたいの」と聞かれたときに思った、したくないこと、の続きを、あたしは思い出していた。
あたしは、大人に、なりたくなかった。大人になって、知らぬ間に母にそっくりになってしまうことを、あたしは何よりも恐れていた。
ぼくはいい歳こいた大人だけど共感できる…
11.北斎
勤めていた会社を、先年辞めて家に居つくようになってからこっち、口べたが高じていた。最初に入った会社は、七年勤めた。次の会社からは、一年ももたなくなった。半年もすると虫が騒ぎだして、どうしても続けられなくなる。最後に会社を辞めてからは、この不況のせいもあって、もうどこも雇ってくれなくなった。父からも母からもとりたてて説教をくらったり非難されたりはしないが、毎日の家の空気の中に、私の今の身上を嘆く気配が、そこはかとなく漂っている。それで、ますます口べたになる。
ぼく、これに結構近い状況なので、すごーく共感できちゃう…
こんな風にたまにドキッとする部分があるんだけど、川上弘美さんの世界は全然暗くない。やさしい。
女性主人公はかわいらしい。切ない話もきれいで明るい。動物の擬人化も「ありえない!」なんて思うことなくすーっと幻想的な世界に入れてくれる。
このやさしい世界が大好き。
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