【読書感想】川上弘美さん著「真鶴」失踪あり不倫あり幽霊あり、家族同居なのに孤独という不器用な人間の心が味わえる(芸術選奨文部科学大臣賞)
ぼくがこれまで読んだ川上弘美さんの作品とはだいぶ違う味わい。
日本的でちょっと古めかしい感じの世界だけど、たかだか10年前の作品だから、時代がそうだったわけではなく、わざとそうしたんだろう。小説の世界でのポピュラーな道具、自分の分身のような幽霊も使われてる。
真鶴とか熱海とかって、古めかしくてちょっと暗い感じがする。幽霊もなんだかしっくりくる。
真鶴(まなづる):神奈川県足柄下郡真鶴町。神奈川県南西部にある真鶴半島とその周辺にある町。東京から見ると静岡県熱海市の手前にある海沿いの町。
静かな世界だけど、言葉の洪水でたたみかけてくる。頭のなかで考えている状態とか、会話しているときのように、少し戻ってまた進む書き方。「昨日買い物に行った。その前に食べた朝ごはんは…」みたいな感じ。読んでるうちにうまくシンクロできて、あれ?って少し戻ったりすることなく一気に読めた。
うるっとさせるようなところはないけど、最後のほうで一箇所、あぶなく泣いちゃうところがあった。結構突然に来てびっくりした(苦笑)
不倫を描いているけど、それはこの作品のテーマではないと感じた。テーマはずばり「孤独」だと思った。
周りの人々が自分から離れていくと感じる人間の心、でも自ら手放してしまっているとも言える人間の性、どうしようもないけどなんでそうしちゃうかなあという、なんとも残念でなんとも切ない感じ。
夫は失踪していなくなったけれど、主人公(女性)の母がいて、娘もいる。しかも同居している。それなのに孤独。それでも孤独。リアルだ。
ふつうであることは、難い。ふつうでないことは、いくらもある。けれど、ふつうでないことは、たいがい持ちこたえることができない。いずれ、壊れる。壊れに向かうことは、易い。ふつうのことを持ちこたえることが、いちばん難いのだ。
なにを考えてるの。青滋が聞く。
つまらないこと。答える。
ぼくもよくこんなつまらないことを考えてる。考えても仕方ない、考えてもどこにも進めないようなことを考える。考えてしまう。生き方が下手と言えばそれまでだけど。。
でも多くの人がそんな風に生きてるから、こんな素敵な小説があるんだと思う。
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