【読書感想】原田マハさん著「小説 星守る犬」終始ウルウルしながら読める、幸せとは何なのかを描いた作品
原作は漫画。映画化もされている。
ぼくは漫画も映画も知らずの状態からこの小説を読んだ。
1時間くらいで読める短い小説で、子供も読むことを想定しているっぽい感じ。
泣ける。
後半盛り上がってドバーじゃなくて、前半からウルウルできる。
目に涙がずっと溜まってるので文字がぼやけて読みづらい。
なんとか涙をこぼすことなく読み終えることができた。
最初に結末をはっきり書いてネタバレからスタートするという構成だけど、全然おもしろかった。
☆ ☆ ☆
飼い犬と飼い主との死に向かう旅が描かれている。
大半が犬を主人公にした文章なんだけど、ぼくは完全に飼い主のほうに共感して、飼い主の立場でこの物語を楽しんだ。
飼い主は元々、結婚して子供もいる何の問題もない中年男性だったけれど、病気を持つようになって、職を失って、妻と子供と別れるはめになってと落ちぶれていく。
その状況につい自分の身を重ねてしまい、のめりこんでしまった。
ぼくの心をツンツンとした文章。
一緒だよ、っていうのと、ずっと一緒だよ、っていうのは、きっとずいぶんちがう。それだけは、ぼくにもわかる。
「ずっと」という言葉には力があると思う。だからこそ口に出すのはすごく勇気がいる。
「もしも、おれがだなあ。『自分に投資してスキルアップする』とか、そんなハゲたこと言い出してみろ。たちまち時間にしわ寄せがきて、余裕がなくなって、こんなふうにゆっくり散歩なんてありえんのだからな。感謝したまえ」
飼い主が犬に話しかけているセリフ。これをわざわざ言わなくてはいけないということころに心の葛藤を感じる。スキルアップとかを全く考えていなければこんなこと言わなくていいもん。
少年は、袋を引き裂くと、夢中でチョココルネをほおばった。ぼくは、彼の近くへ恐る恐る近づいて、あざだらけ、傷だらけの足のすねを、遠慮がちになめてみた。
とても悲しい味。きのう今日じゃちょっと出せない、ねんきの入った悲しい味がした。
そして、とてもとてもさびしいにおいを、少年はまとっていた。
「さびしいにおい」っていうのは確かにある。別の言葉にすると「さびしいオーラ」ってとこかな。これは洋服とかじゃ隠せない。不幸のオーラをまとわないようにしたいとぼくは思ってる。それには中身をなんとかするしかない。
☆ ☆ ☆
この小説は、メインの部を真ん中に置き、前後に第三者視点で主人公たち(男と犬)の死後が描かれている。この前後もとってもおもしろい。
愛すれば、別れがつらい。求めて、与えられれば、失うのがつらい。だから、誰かを愛することに臆病になった。
愛さなければ、傷つかずにすむ。望んでも得られないのならば、最初から望むまい。そんなふうに、自分の中で、ブレーキを踏み続けていた。
これはおおいに心当たりがある。ブレーキ踏みまくってる気がする…
最後に冒頭のネタバレ部分をご紹介。作品のテーマを提示してる。
私の住む町にある原生林。そこに打ち捨てられていた一台の車。
その中で息絶えた身元不明の男。
彼のかたわらにうずくまるようにして、白骨化していた犬。
けれど、私は信じたかった。彼らはきっと、幸せだったのだと。
<中略>
もしも、彼が、ひとりきりでその生涯を終えたとしたら、あるいは不幸な最期だったと言うべきかもしれない。
けれど、彼には、犬がいたのだ。
ただ彼に寄り添うことだけを自分のすべてとする相棒が。
どうしてそれを、幸せでなかったと言うことができるのだろう?
幸せとは何なのか?
その一つの事例となる物語がこの冒頭のあとに展開していく。
大丈夫。ネタバレしてても泣ける。
電車とかで読まないほうがいいと思う。
↓原作の漫画(電子書籍ある)
↓映画
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